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Column

どこまで耐えられる我が社の資金

さて、前回は流動比率についてお話ししましたが、今回は当座比率についてお話しをしていきます。

前回お話しした流動比率は、1年以内に支払う負債と1年以内に現金化できる資産の比較で安全性を見る指標でした。

当座比率は、流動負債に対して当座資産をどれだけ保有しているか、会社が支払に備えたお金をどれだけ持っているかを率で見ようとするもので、会社のフトコロ具合を見る場合に活用し、一般的には100%以上が望ましいとされています。

早く言えば、すぐに返済しなければならない買掛金や借入金などに対して、どれだけの現金・預金を持っているかを率で表わそうとするものです。

当座資産とは、貸借対照表の「流動資産」を構成する項目で、短期間に資金化できる資産のことを言います。
下記に当座資産に属する科目と流動負債に属する科目を上げてみました。

(当座資産) (流動負債)
現金預金
受取手形
売 掛 金
有価証券
未収入金
etc
買 掛 金
支払手形
借 入 金
未払費用
預 り 金
未払法人税
未払消費税
etc
固定資産 純資産

具体的には、流動資産の中でも特に換金性が高い、現金・預金、受取手形、売掛金、短期保有の有価証券、未収入金などが挙げられます。
当座資産は、すぐに現金となるものが対象となります。
棚卸資産は、現金化に少々時間が掛かるので、当座資産には含まれません。

流動比率では現金化までに時間を要する在庫が含まれていることから、これを含まない当座資産を利用することで、流動比率より厳しく支払能力を見たい場合に利用します。
このため当座比率は、流動比率よりも より厳しく会社の支払能力を見ようとするところから、より酸っぱいため酸性比率とも呼ばれています。

当座比率の算式は、

当座比率 = (当座資産÷流動負債)×100%

です。

当座比率を利用する際の目安はと言いますと
●優 良   150%以上
●理 想   100%以上
●標 準    90%以上
●要注意    70%未満

当座比率が高いほど短期的な支払能力が大きいことを示しています。

当座比率が150%以上だと超優良といってもいいですね。
理想としては100%以上あるといいです。
これは当座資産が流動負債以上あるので、返済能力が充分にある状態です。
当座比率が70%未満になると、借入金の返済に四苦八苦していると言うことができます。

売掛金が多く計上してあるのに貸倒引当金を計上していない会社は、決算内容が芳しくないと見られてしまいます。
何故かといいますと、当期利益を多く出したいために貸倒引当金を計上していないのではないかと考えることができるからです。

完璧に見える当座比率ですが、流動比率と同様これにも問題があります
①預金の中に支払資金として使えない拘束預金はないか?
(拘束預金とは、借入金の担保に出している定期預金を言います。)
②売上債権の中に回収できない債権、不良債権はないか?
(不良債権とは、貸倒れとなっている売掛金・不渡手形を言います。)
③ 有価証券の中に時価の下がってしまったものはないか?

いかがですか?
まだまだ金融機関が見ている箇所はたくさんあります。
全ての比率をクリアすることは至難の業と言っても過言ではありません。
あまり比率にこだわる必要はありません。

例えば次のような会社が2社あったとします。
1つは甲社で売上高が5千万円の会社、もう一方は乙社で売上高が5億円の会社です。

貸借対照表

上記2社の当座比率を計算すると
 1.甲社  25,000÷ 24,000=104%
 2.乙社 250,000÷240,000=104%
いずれも当座比率は104%となります。

しかし、両者の貸借対照表に上がっている数字の単位は同じでも乙社の数字は甲社の10倍の数字です。

このように当座比率だけでなく率そのものにとらわれすぎると決算内容を読み誤ってしまいます。
数字を読む時は呉々も気をつけましょう!!

余談ですが、
決算書は、税務申告するためだけに作られてはいません。
いろいろな場面で利用されます。
私の顧問先での一番の利用方法としては、事業計画書を計画する際の土台として利用している場合が多いです。
●今期の決算書の内容はどうだったか?
●経営成績はどうだったか? 良かったか、悪かったか
●前期・前々期と比較してどれだけ売上を多く上げれたか? 下がっていたか?
●売上総利益はどうだったか? 予測通り稼げたか?
●営業利益は? 経常利益はどうだったか?
●利益をなぜ稼げたか?
●利益がなぜ減少したか?
●翌期利益を上げるためにどのような戦略を立てるか?

また、金融機関から融資を受ける際にも最重要書類として利用されます。
●当社の借入は月商のどれくらい借りているかを計算する借入月商倍率
●金融機関からの融資を何年で返済を終えるかを計算する債務償還年数
●キャッシュフロ-(当期利益+減価償却費)が、年間借入金返済額以上か否か
などなど、これらの基となるものは決算書です。

決算書は会社の顔です。
特に貸借対照表は、会社を設立した時から今現在までの生き様を表す書類です。
社長さんが、どんな考えで会社を運営してきたかが分かる財務書類です。
結果が良ければシッカリした経営をしてきた証です。
結果が悪かったら経営をサボった証です。
さあ、社長さんが納得できる決算書を作りましょう!!