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Column

それだけは、やってはならぬ

それだけは、やってはならぬ

「1ダース」といえば普通は12個(本)ですが、パン屋の1ダースは13個。これを「ベイカーズダズン(baker’s dozen)」と言います。

かつてパン屋には、うっかり数が不足した場合のクレームを防ぐ策として、あらかじめパンを1個多く作っておく習慣がありました。ベイカーズダズンはそこから来た言葉で、ビジネスの世界では職業倫理を説く警戒としても使われます。

パン屋が12個分の材料で13個のパンを焼いて商人に卸し、水増しした分のパンで商人を儲けさせると注文が増え、結果としてパン屋も儲かる。

しかし商売人は、そんな誘惑に乗ってはいけない――。

ベイカーズダズンにはそんな自戒の意味が込められているようです。

ブームになった「品格」という言葉で言い替えれば、ベイカーズダズンとは、企業の、商売の、社長の品格を問う姿勢とも言えます。

過去、自分の利益を最優先した企業の崩壊劇を私たちはいくつも目にしました。

崩壊した企業に共通していたのは“上限”はあっても“下限”はなかったことです。

彼らの目的は、上限に達することであり、そのためには手段を選びませんでした。つまり「それだけは、やってはならぬ」という下限の線引きをしなかったために企業モラルが崩壊し、商売に対する誇りも、経営者自身の誇りも見失った果てに砂上の楼閣となったのです。

今のような不況が続くと、企業モラルや商売の品格などは二の次だと考える経営者がいてもおかしくはありません。

しかし、数多くの崩壊劇が物語っています。12個分の材料で13個のパンを焼くことは「割に合わないこと」だと。

そこで、ベイカーズダズンの甘い誘惑に負けないよう、今すぐ商売の下限を設定しましょう

「それだけは、やってはならぬ」という下限の線引きをした上で、目標に向かってどんどん進んで行く。それが本来の商売の基本であり、人としてのあり方でもあろうと思います。