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Column

誇り ~懐の余裕よりも、心の余裕

誇り ~懐の余裕よりも、心の余裕

昨年の11月、トヨタがF1からの撤退を表明した翌日に、ヤンキースの松井選手がMVPを受賞しました。

「明暗を分けた」という見方もできますが、記者会見で見せたトヨタの山科専務の男泣きと松井選手のその涙には、ひとつの共通点があった気がします。

それは「誇り」です。世界の舞台から立ち去る者と「世界の」という名誉を与えられた者、そのどちらからも会社や仕事に対する揺るぎない誇りを感じました。

なくてもやっていけるけれど、なくしてはいけないもの。それが「誇り」だろうと思います。自分のやっていることに「誇り」が持てなくなったとき、そこで心が折れてしまいます。

ある有名企業で働く中堅社員が、最近社内でツバを吐くことが多くなったと話していました。

きっかけは、コスト削減の一環として休憩室からイスが撤去されたことだそうです。経営者は「たかがイスくらい」と思っているかもしれませんが、

社員の見解は違います。立ったままの休憩に文句があるというよりも、経営者のゆとりのない発想が社員にダメージを与えました。

売上が思うように伸びなければ、コスト削減に励むのは当然としても、「自分の会社は休憩室にイスを置く余裕もないのか」と思ったとき、「そんな会社」で働いていることに社員の心は折れてしまったのでしょう。

会社や仕事に誇りが持てなくなったから、無意識のうちに社内にツバを吐いてしまったのです。懐(ふところ)の余裕よりも、心の余裕を失ったときのダメージのほうが大きいことは、賢明な経営者であればよくご存じのことだと思います。

明けて2010年。新聞やテレビでは不況の余波はまだ続いていると報じています。

思うように社員の懐に余裕を与えることは難しくとも、せめて心の余裕は奪わないようにしなくてはなりません。これは経営者自身にも言えることです。

今年も心が折れることなく「倒れるなら前に!」の気概でいきたいものです。

明るい日差しが真正面から差し込んで来ます。誇りを持ち、心さえ折れなければ勝ったも同然です。