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Column

素材を生かすも殺すも社長次第

素材を生かすも殺すも社長次第

刃物の切れ味が鈍いこと。

または、その刃物自体のことを「なまくら」と言います。

切れ味の悪い包丁は、2つの意味で危険です。

1つは素材の良さを殺してしまうこと。

もう1つは調理人をイライラさせること。

調理人のストレスは、間違いなく料理の味に悪影響を及ぼします。

この歴史的な不況の中、ある社長が朝礼で社員全員を前にして言いました。

「今まで秋刀魚を食べていた人は、これからめざしを食べてください」と。

すでに週休3日を実施している上に、さらに給与をカットするという、社員にとっては死活問題とも言える非常事態宣言です。

会社の現状を考えれば、社員とて給与カットもやむを得ないだろうと感じていたかもしれません。

社長は「必ず、また秋刀魚が食べられるようにします。それまでの間、私と一緒にめざしを食べてください」と言ったのです。

何とか保っていた社員のやる気だけは維持したい。その一心で全社員を前に頭を下げました。

経営が厳しいのはどの会社も同じです。

しかし、社長は「このままだと、自分がなまくらなばかりに社員という素材の良さを台無しにしてしまう」と焦っていました。

いくら不況とはいえ、利益が出ている会社も多くあります。

「そのような会社と我が社との違う点は、社長の判断能力と行動範囲の差だけ」と社長は言いました。

この社長の考え方が、この会社にどう影響したのかは言うまでもないでしょう。なまくらには「意気地がない」という意味もあります。

意気地とは、事をやり遂げようとする気力。

社員を守るという責務をいいます。

責務を完遂しようとした社長は、決してなまくらなんかではありません。

包丁の切れ味を復活させるのは砥石です。

ならば、社長にとっての砥石とは何か。

それは、社員です。

社長と社員が互いに切磋琢磨し、切れ味がもっと良くなれば会社の業績も確実に伸びるでしょう。

なにより、社長の言葉に最後まで耳を傾け、喜んで「めざしを食べます」と言ってくれた社員が、将来の利益の源泉なのです。