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Column

会社の骨密度

会社の骨密度

初めて会ったときの彼は、とても腰の低い人でした。それから数年後に再会したときの彼は、とても横柄な人になっていました。商売の成功によって大事にすべきものを見誤った、というよくある話です。

念願の起業を果たした彼は、持ち前のビジネスセンスと脇を固める強力な右腕のおかげで、とんとん拍子に成功していきました。

会社の規模が大きくなるにつれて身に纏うスーツが、量販店の安い吊るし → 百貨店のイージーオーダー → 最後は、ジョルジオ・アルマーニなどのブランドものへと分かりやすくグレードアップして、所有する車はスーツ以上に贅沢を極めました。

そして、ポルシェに続いて白いフェラーリも買ったという噂が巷に広まる頃、彼をよく知る人たちの口から、「あいつもそろそろだな」という言葉を聞くようになりました。

フェラーリを買うお金は惜しくないのに、右腕として長年自分をサポートしてくれたナンバー2やナンバー3に払う給料は惜しくなったようです。

生え抜きの右腕たちは黙って彼の会社を去りました

彼は強気で、「人が辞めたら雇えばいいんだよ」と豪語しますが、日々の糧を稼ぐために働くアルバイトがいくら束になっても右腕にはなり得ません。

そんな彼の会社は今、陰で「骨粗鬆症」と呼ばれています。

大事なカルシウムが大量に流れ出て軽石状態になった骨は危機的なのに骨密度は目に見えないし痛みもない。

けれど明らかに骨はもろくなっているわけで、ちょっとでもつまずいたら大怪我です。

万が一、彼が会社の骨密度の低さに気づいたとしても、一度減ってしまった骨密度はそう簡単に増えません

スカスカの骨で会社を維持して行くにはさらに身を削るしかないでしょう。骨密度は、増やす工夫よりも減らさない努力のほうがよほど重要なのです。

さて、気温だけでなく景気も冷え込む一方で、骨密度の低い会社がうっかりつまずけば、おそらく骨折をしてしまいます。

今より骨密度を下げないためには何をすべきか。

答えは、あまりにも当たり前すぎてジョークのようですが、これしかありません。

――初心、企業理念という何ものにも変えがたい自社の骨を大事にすることです。