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Column

固定長期は持つべきか? 持たざるべきか?

固定長期は持つべきか? 持たざるべきか?

前回は固定比率のお話しをしました。
固定比率は固定資産と自己資本との比率でした。

今回お話しする固定長期適合率とは、固定資産を買うために使ったお金が長期借入金や自己資本でどれだけまかなわれているかを見るための指標です。
また、その会社の規模に見合った固定資産の所有をしているかどうかをみる指標でもあります。

固定資産を買うお金は長期に渡って支払われる長期借入金や返済が必要ない株主からの資本で賄われなければなりません。

ところで、固定長期適合率の算式は以下のとおりです。

固定長期適合率=固定資産 ÷ (長期借入金+自己資本)×100%

固定長期適合率では、固定資産が自己資本と返済期間の長い長期借入金でどの程度賄えているかを見る比率です。
固定長期適合率の見方を図示すると下記のようになります。

貸借対照表

貸借対照表1は、固定資産が長期借入金と自己資本との比率がちょうど100%の状態です。
一般的に、固定長期適合率は100%以下であれば、望ましい水準とされています。
この100%を超えているのが貸借対照表3で、この比率が100%を超えると、固定資産の一部を短期借入金に依存していることを意味し、資金繰りが厳しくなっている状況を示しています。
固定資産の購入で流動負債の短期借入金を充てている事は大問題です。

貸借対照表2は、固定長期適合率が100%以下で 固定資産が長期借入金と自己資本で賄われていますからこの状態が理想といえます。

日本の会社の場合、固定長期適合率は全産業平均で80%台、製造業平均では70%台にあるとされています。

固定長期適合率の改善策としては、
1. 現在遊休状態の機械とか、将来に渡って使用することがない固定資産を売却とか廃棄を考える。
2. 資本金の増資によって自己資本を充実させる。
3. 利益の内部留保によって自己資本を充実させる。
がポイントとなります。

固定資産の過重な取得は、会社の資金繰りを圧迫します。
固定比率、固定長期適合率で固定資産のバランスの取れた経営をしていただきたいものです。

ここで余談ですが、以前お話しをしたと思いますが、ある社長とのお話しです。

ある社長は、とても社員を大事にする方で、独身者向けの社員寮を買おうかどうしようかとの相談を受けました。
土地・建物の固定資産です。
その会社は、皆さん一生懸命仕事をされ、売上は右肩上がり、当然ですが粗利益もシッカリと稼いでいます。
税務調査があっても何も問題なく終了する会社です。
こういう会社なのですが、私は社員寮購入には反対しました。
何故かというと、会社を取り巻く経済状況が、何時どの様に変化するか分からないからです。
現在のようにコロナ禍で経済が落ち込んでいる状況では資金繰りが圧迫されます。
不動産の取得は、10年、20年と長期に渡る借入金が発生します。
この10年、20年の間に経済状況や会社経営状況も変わってきます。
その時、長期に渡る借入金の返済に耐えられる体質を持っているかどうかです。

その会社は、現在もシッカリとした財務体質を保持していますが、それでも、あの時社員寮を買わなくてよかったと社長さんは言っておられます。

無理して資金繰りが苦しくなるより、社員が安心して働ける場を設定し、安定した給料を払い続けることが社長の努めだと思います。